やっぱり妊婦さんにストレスはよくない??。ストレスと早産について。

周産期

妊娠16-20週までに、強いストレスとともに頸管膣分泌液中のβdefensin-2が低下すると、早産リスクが上昇した、とのアメリカでの研究結果が、2020年5月のAmerican Journal of Obstetrics and Gynecology MFMに掲載されました(こちら)。

早産とストレス

ストレスがあると早産になりやすい、と昔から言われていますし、数々の研究があります。でもまだはっきりとした結論はでていないみたいですね。

2018年には、10000人の初産婦を対象とした大規模前向き研究をしていますが、ストレスは早産のリスクを上昇させなかったとしていますし、5000人を対象としたカナダでの研究も、やっぱり早産率の上昇はありませんでした。

ストレスが免疫系等に影響を与えることはわかっていますので、おそらく免疫系の変化が早産を惹起しているのでは、と言われていますが、まだはっきりと結論は出ていないようです。

そこで、著者らは、頸管膣分泌液中に含まれる免疫物質であるβdefensin-2に着目して、この物質が減少すると早産になるのではとの仮説をたてて、検証しています。

βdefensin-2とは

この物質がどのように早産と関連しているか調べた研究はほとんどありませんが、抗微生物作用があるらしい、ということはいくつかの研究で示唆されています。

このβdefensin-2の作用機序としては、細菌などの細胞膜の透過性を上昇させることで、DNAやRNAを障害するような物質の流入増加が加速するのでは、と言われているようです。

最近の研究では、腟内細菌叢が乱れている黒人女性(嫌気性細菌やカンジダが多く検出され、Lactobacilusが少ない)には、このβdefensin-2を投与すると、早産率が減ったとする報告もあります。

ストレスとβdefensin-2と早産

今回の研究は、腟内細菌叢と早産の関連を研究したThe Motherhood and Microbiome (M&M) コホートに登録している妊婦さん2000人からサンプルを抽出したケースコントロール研究です。

期間は2013年12月から2016年12月の間で、対象としたのは、人種/民族でマッチさせた妊婦さん519人(早産群110人、正期産群409人)

16ー22週までにストレステストとβdefensin-2を測定しています。

除外条件としては、胎児奇形、臓器移植、ステロイド服用している、HIV陽性の人。

ストレステストはCohen’s Perceived Stress Scale (PSS- 14)でストレス具合をチェックしています。質問項目ごとに得点がついて、30点以上を高ストレス群、30点未満は低ストレス群としています。

頸管粘液中のhuman βdefensin-2は、enzyme-linked immunosorbent assay で計測しています。

中央値17.098pg /ml未満を低値βdefensin-2群、中央値以上を、高値βdefensin-2群としています。

結果は。。。。

今回の研究対象となった妊婦の大部分はは黒人でした(72.8%)。

また80.2%の人はストレステストが30点未満でした。

まず、ストレスとβdefensin-2の関係ですが、当初の予想とは裏腹に、今回の研究ではストレスが高い場合、βdefensin-2が低くなるオッズ比は減少してしまいました(adjusted odds ratio [aOR], 0.63; 95% confidence interval [CI], 0.38ー0.99) 。

これは早産をした群、満期産の群どちらでも同じ結果でした。ストレスが高ければβdefensin-2は減少するのでは、と思っていたので意外な結果でした

さらにストレスとβdefensin-2を個別に見てみると、高ストレスとβdefensin-2低値はどちらも早産を増やしませんでした。これは交絡因子で補正した後も変わりませんでした。

著者らは、ストレスとβdefensin-2で、値の「高い」、「低い」、で4つのグループを作って、それぞれの早産、満期産について調べています。

そのうち、低ストレスで高βdefensin-2値の妊婦さん(ストレスなく普通の人)と、高ストレスで低βdefensin-2値の妊婦さん(ストレス高くて免疫も弱ってそうな人)の結果を見てみましょう。

低ストレスで高βdefensin-2値、つまりストレスなく膣内の環境もよさげな人で、早産になった人は32/110人(29.1%)、満期で分娩となったのは158/409人(38.6%)でした。

それに対して、

高ストレスで低βdefensin-2値、つまりストレスありありで免疫が弱っていそうな人で、早産になったのは14/110人(12.7%)だったのに対し、満期で分娩となったのは23/409人(5.6%)でした。

低ストレスで高βdefensin-2値だった人と比較すると、高ストレスかつ低βdefensin-2値だった人が早産になってしまうオッズ比は、3.16( 95% CI, 1.46ー6.84) で、有意に高いという結果した(人種、喫煙で補正)。

ちなみに、高ストレスだけど低βdefensin-2値の人、低ストレスだけど高βdefensin-2値の人は、どちらも早産オッズは高かったのですが、有意差はありませんでした。

結論は、ストレスとβdefensin-2の関係はよくわからなかったけど、16-20週の妊婦さんにストレスがあって膣内βdefensin-2値が減っているような状態だと早産のリスクが高そう、というはなしでした。

ストレスとβdefensin-2との関係がはっきりでなかったのが残念でしたねー。

これがわかれば、ストレスを受けるとβdefensin-2が減って、だから早産になる、という面白い話になったのに。。

でも、このβdefensin-2に関しては、面白い実験があって、15人の健康な人にストレステストを受けてもらい、テストの途中でヨガストレッチをする群と普通に安静だけの群とをわけて、ストレステスト前と後の唾液中のβdefensin-2を調べてみたそう。

結果は、ヨガストレッチをやったほうが、ただ単に安静にしていたよりも、唾液中のβdefensin-2下げ幅が有意差をもって減少していたそう

いずれにせよ、我慢してストレスに耐えてもあまりいいことはなさそう。

ストレスを感じたら逃げるが勝ちです

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