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「50代バブル世代がいま思うこと」
いま、50代のバブル世代は、とかく社会のお荷物扱いされることが多いものです。
４０代の不惑のとしを超えて、５０代は天命を知る時期と孔子様は言われています。いわば、これから世の中に対して恩返しをしていく時期であるとも言えます。
人生は、もはや100年時代に突入しています。
私のような生活をしている人間が100歳まで生きる可能性はほとんどないでしょうが、大方の人間はおそらく80歳台後半までは生き残る可能性が高いと思われます。
すると、これから少なくみても今から３０年程度は、生きていかないといけないのです。
老後資金の問題もあるでしょう。しかし、そんな話はYoutubeを検索すれば、どうやって老後資金を確保すればいいか、とありがたくもおせっかいに指南してくれる動画に山ほど行きあたります。
お金の話はそちらにまかせて、これからの３０年、どうやって生きていけばいいのかを考えてみたいと思ったのです。
さて、第１回目のお題は、同窓会です。
この同窓会という話題は、ある程度シニア向けの雑誌にはかならず出てくるネタです。
実は、わたしはこの同窓会が大の苦手なのです。
同窓会もいろいろありますが、私の場合、いまでも付き合いがあるのは、大学時代の友人たちなのです。
私の職業は産婦人科の医師ですが、一番最初の大学は青山学院大学を卒業しているのです。
特に説明はいらないと思いますが、東京にある私立大学でキリスト教系（メソジスト）大学です。そこで何を勉強していたか、というと、国際政治を勉強していたのです。
そこで出会った友人とはもう30年来の付き合いになります。
みないい人間ばかりである。
しかし、この人たちと会話ができないのです。
会えば、昔の話がでる。最初は懐かしい話に花が咲く。しかし、初めの１０分も経過すると、もう話題がないのです。延々と昔話をしている友人の、もっぱら聞き役に徹するのです。
正直に言うと、つまらない、と思っていたのです。
以前の私は、アフリカでの周産期医療普及に大忙しでした。
日本とは比べ物にならないくらいなにもないところで、手術をし、分娩を介助して、妊婦と赤ちゃんの命を救う、というまさに自分にとっては天命を実践していると思っていたのです。
その私にとって、昔話をしている暇はなかったのです。
いま目の前にある課題を解決することに大忙しで、とても昔を懐かしむ余裕などなかったのです。
なぜ、彼らは昔の話ばかりするのか。確かに楽しい大学生活であったことは事実です。しかしそれは記憶の中の話です。
昔話というのは、自分の記憶と他の人の記憶との整合性を確かめ合う作業だと思うのです。私の記憶と、他の人の記憶が同じであった、あーよかった、と。
それだけの話だと思うのです。
楽しい話もあれば、悲しい話もある。悲しい話はほとんどないが、それでも、私の記憶と他の人の記憶が一致すると、やっぱり、あーよかった、となる。
これは、記憶というものがいかに曖昧なものであるか、が根本にあると思うのです。
自分、すなわち自我というものが、この曖昧な記憶の集まりでしかないであれば、自分の存在がいかに不安定な土台の上に成り立っているか、我々は知らず知らずのうちに自覚していると思うのです。
だから、記憶が一致していると、うれしい。
少しだけ、自分の存在が確かなものになったような錯覚にとらわれるからである。
あーそうだね、そんなこともあったね、あんなこと言ってたね、などなど。
しかしいくら確認したところで、私の記憶している過去と、他人の記憶は同じにはならない。それを一生懸命に埋めようとする作業が、同窓会なのでしょう。
自我というのは、幻です。しかも、50代バブル世代の私たちは、いままで自分の存在をバックアップしてくれていた「会社」からもお荷物扱い。そこにはもう居場所がないのです。
家族も所詮は自分とは違う人間の集まりなのです。ちょっとだけ一緒にすごした時間が長いだけです。それだけ思い出も多いわけですが。
思い出、記憶、が自我を作るのであれば、それを確かめることこそが、自分が存在していることを確認することなのです。
いま私は自分が立ち上げNPO法人から追い出され、日本で坐禅中心の生活をしています。
天命と思っていたアフリカの周産期医療からは関係ないところで生活しているのです。
さて、いま自分が同窓会に誘われたら、参加して昔ばなしをするでしょうか。
おそらく誘われても、参加することはないでしょう。
なぜなら、今の私にとって、自我をどうやって滅するか、その方法を見つけることが最も興味があり、大事にしたいことだからです。
昔の友人に会うのは嬉しいことです。しかし、昔ばなしを通して記憶を確かめ合う作業をしてしまうと、本来幻である自我を強めることになってしまうのです。
もともと友達のすくない私には、誘ってくれるだけでもありがたいことではあります。でも、こんなことをしているともう誘ってくれなくなってしまうでしょう。それも寂しいものです。
しかし、それが執着なのでしょう。
今日はこのへんで。
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