22週から27週未満の超早産児において、出生前ステロイド母体投与にマグネシム母体投与を併用すると、ステロイド単独投与群と比較して、重篤な神経発達障害と死亡リスクが減少した、とするアメリカでの研究が、2020年6月のObstetrics and Gynecologyに掲載されました(こちら)。
超早産児とは
早産児とは、在胎37週前までに生まれてきた赤ちゃんのことをいいます。
なので、在胎36週6日でうまれてきたら、早産児となります。
超早産児とは、超がつくくらい早く生まれてきた、ということになります。
日本では在胎28週前未満に生まれてきた赤ちゃんのことをいいます。
ちなみに、低体重出生児とは、在胎週数とは関係なく、生まれてきた時の体重が2500g未満の赤ちゃんのことをいいます。1500g未満で生まれれば、極低出生体重児、1000g未満で生まれてきた赤ちゃんは、超低出生体重児といいます。
出生前ステロイド投与とは
ステロイド(ベタメタゾンまたはデキサメタゾン)を早産になりそうな母体に投与することによって、胎児の成熟が促されることが知られています。
早産で生まれてきた赤ちゃんは、まだお母さんのお腹の外の世界で生きていく準備ができていません。
特に、自分で息をして、肺をつかって酸素を体に取り込むという、大人にとっては当たり前のことが、未熟な赤ちゃんには非常に難しいことがあるのです。
こういった赤ちゃんに対して、ステロイドをお母さんに投与すると、胎児の肺が成熟する、とされています。
さらに重要なのは、ステロイドを投与すると出生後の頭蓋内出血のリスクも下げる、ということ。
未熟な赤ちゃんは、未熟な脳細胞も多いので出血するリスクが高く、出血の程度が重度だと重い障害がのこることがあります。
ステロイド投与は、いろんな研究で赤ちゃんの予後を改善する効果があることがわかっていて、日本でも欧米でも大体同じような使用方法です。
マグネシウム製剤とは
一般的に、マグネシウムという薬は、高血圧がある妊婦さんに対して投与すると、痙攣を予防できるとされています。
妊娠が原因で血圧が上がってしまう妊婦さんの病気があります。
これを妊娠高血圧症候群といいます。
この病気、妊婦さんはいたくもかゆくもないのですが、実は大変おそろしい病気で、知らない間に全身の血管が障害されてしまい、重症になると痙攣を起こします。
これを子癇発作(しかんほっさ)といいます。
重症の妊娠高血圧と診断された場合、マグネシウムを投与すると痙攣を予防する効果がある、と多くの研究で明らかになっています。
最近、このマグネシウム剤は、母体の痙攣を予防するだけではなく、早産でうまれてくる赤ちゃんの神経保護作用もある、と言われています。
ステロイドの母体投与は以前から行われているけど、最近話題のマグネシウムも同時に使ったらどうなん?ってことで今回の研究となりました。
両方を使うと重篤な神経発達障害と死亡リスクが減った
研究は、前向き観察研究でおこなれてます。
評価したのは、神経発達障害、死亡、頭蓋内出血(あたまで出血すると神経障害が残ったりします)の頻度。
対象となったのは、2011年1月から2014年12月までに生まれた22週0日から26週6日までの早産児。神経発達尺度は、退院後に修正18ヶ月から26ヶ月にBarleyIIIを使用して評価しています。
重篤な神経発達障害とは以下のとおり:重症脳性麻痺(Gross Motor Function Classifica- tion System level 4–5);Bayley Scales of Infant and Toddler Development, 3rd edition (Bayley-III) で運動認知が70点以下;失明;難聴、があった場合。
あと、頭蓋内出血のリスクも評価しています。
結果は、ステロイドとマグネシウム両方とも投与を受けた群は、ステロイドのみ投与された群と比較して重度の神経発達障害または死亡の割合が減っていました。
しかし退院時での、頭蓋内出血の頻度自体は、ステロイド単独群と比較して差はありませんでした。
在胎週数別に解析した結果では、この結果は、22ー24週までのちょーちょー早産児には当てはまらなかったみたいです。つまり、マグネシウムをステロイドと同時に投与しても、ステロイドだけ投与した群と、大きな差が認められたなかった、ということです。
25ー27週未満の早産児では、同じように、重症神経発達障害または死亡率の改善が見られました。
マグネシウムを使っても、頭蓋内出血は減らなかったというのは、以前のメタ解析でも言われていますので、同じような結果でした。長期フォローをした場合、重症神経発達障害なく生存できる割合が高くなるかも、ということがわかりました。
最新の日本のガイドラインにも、27週未満の児にたいしてマグネシウム製剤を神経保護目的に投与することが書かれています。
ちょっと残念なのは、このマグネシウム製剤の使い方の詳細が書いてなかったことです。いろんな投与方法があるのですが、研究によって様々です。どのような使い方が最も効果が高いのか、ぜひ次の研究で知りたいです。
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