多胎の早産において、一人目が分娩になったあと、後続児の分娩を遅らせることにより、後続児の生存率が改善されるが、母体の重篤な合併症率は39%になる、というシステマティックレビューが、2020年4月のAmerican Journal of Obsterics and Gynecologyに掲載されました(こちら)。
特に流産になってしまうような早い週数で生まれてしまった場合、残った胎児をどうするか、が問題になります。
多くの場合は、そのまま後続児も分娩となるケースが多いのですが、中にはそのまま分娩にいたらないケースもあります。
今回の研究では、多胎で一人目が流・早産でうまれた場合、後続児の分娩を遅らせる管理方針(Deleyed Intervavl Delivery: DID)をして、後から生まれた児の生存率が上昇するのかどうか、を過去に行われた研究を集めて検討しています。
今回の分析で対象にした論文の条件は、最低でも5症例以上のDIDが含まれていることと、最初に生まれた児と、残った児の生存率が報告されている、の2つです。
多くは後方視的な研究で小規模であり、RCTはひとつもありません。まぁそうですよね。。。
では結果はどうだったのか
2295の論文から、16論文を採用しています。
492症例(432症例の双胎、56症例の品胎、3症例の四つ子 1症例の五つ子)を対象にしています。
平均延長期間は29日(n =127例)で一人目の出生児の平均在胎週数は21週6日(n=127例)でした。
492症例を用いた解析では、DIDで管理した場合、最初に生まれた児の生存率と比較して、残った児の生存率を上昇させました(オッズ比5.22 95%CI2.95-9.25、I2 =53%;論文数16, 492症例)でした。
著者らは、研究間のばらつきが大きいため、論文一つ減らして、さらに解析しています。
結果は同様に、13週0日から31週6日までにの多胎児において、DIDにより後続児の生存率は上昇しました(オッズ比 5.59, 95% CI, 3.55e8.80, I2 =5%; 論文数15、 234 症例)。
最初に生まれた児と後続児の生存率を、週数ごとに比較しています。
最初に生まれた児の週数が20週より前だった場合
最初に生まれた児の生存率 0%(0/43)
後続児の生存率 29.0%(18/62)
最初に生まれた児の週数が20週0日から23週6日だった場合
最初に生まれた児の生存率 16.2%(25/154)
後続児の生存率 41.8%(69/165)
最初に生まれた児の週数が24週以降だった場合
最初に生まれた児の生存率 59.6%(109/183)
後続児の生存率 72.9%(140/192)
でした。
では、新生児予後はどうだったのか。
短期的(感染、未熟児網膜症、動脈管、脳室内出血、壊死性腸炎、慢性肺疾患)あるいは長期的(神経発達予後や重大な後遺症)にみて、先にうまれた児と後続児の予後はかわりませんでした。
さらに、母体の予後はどうだったのか。
母体の合併症について報告があったのは、12の研究で183症例でした。
合併症があったのは、全部で71例、38.8%でした。
56例で感染/敗血症、12例で産後出血、8例で胎盤早期剥離、2例で子宮摘出、1例で子宮膣瘻孔、という結果。後続児の分娩が帝王切開だったのは、31.8%(41/129、研究数10)でした。
かなり重篤な母体合併症がおきている印象です。
後続児が子宮内にとどまった場合の管理方法については、各研究でそれぞれ異なっており、頸管縫縮術をおこなっている研究もあります。また、子宮収縮抑制剤の投与が行われいる研究の場合、期間、方法がまちまちです。
著者らは、第1子が超早産で経膣分娩になった場合に、DIDは後続児の生存率を上げる方法として、考慮されてもいいのでは、と主張しています。
しかし、この研究かなり古いものも入っているみたいで(1994年の論文とか。。2000年くらいが多い)、先進児が24週で生まれた場合の生存率がかなり低い印象ですね。
22、23週の子は、20週の子と一緒にされてしまっているので、生存率がどれくらいなのかわからないのですが、そんなに変わらないのかもしれません。
生存率だけで言えば、24週の子を、母体のリスクをとってまで子宮内にとどめておくベネフィットが果たしてあるのかどうか、という疑問が残ります。
DIDをして生まれてきても、新生児予後が変わらないのであれば、生存率上昇だけを目的として今の日本の周産期施設で行うメリットがはたしてあるかどうか。。。
著者たちは、新生児予後で差が出なかったのは、報告数がすくなかったからだ、と言っています。やはり、これだけではなんとも結論はでないですね。
DIDをやった場合の管理方針もバラバラですし、できれば管理方針を統一した研究の結果がほしいところです。
著者らが主張するように選択肢として考慮するには、まだまだエビデンスが足りないといったところでしょうか。
きょうはこのへんで。
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