未熟な赤ちゃんのことを早産児といいます。
今回は、2019年1月 Lancet Global Healthに掲載された、世界の早産児についての論文をご紹介します(こちら)。
世界的に、早産児の数は増加傾向にあります。
要因はなかなか複雑で、特に先進国では、早産児に対する医療が発達した結果、とも言えます。
しかし、アフリカなどの発展途上国では、もともと早産が多いことが知られています。
今回の論文は、2014年における全世界の早産率(生まれてきた赤ちゃんのうち、どれくらいが早産なのか)、さらに地域別の推定値を出しています。
結論から言うと、全世界での早産児の数は、1400万人で、早産率は10.6%でした。生まれてくる10人に1人の計算ですね。ちなみに、日本の早産率は5%くらいです(2011年のデータ)。
これらの早産児の81%(1200万人)はアジアとサハラ以南のアフリカ諸国の低所得国で発生していました。特にインド、中国、バングラデシュ、ナイジェリア、インドネシアの5カ国で生まれてきた早産児が45%を占めていました。
早産児とは??
実は、多くの発展途上国では、うまれてきたあかちゃんが早産なのか、普通にうまれてきたあかちゃんなのか、を見分けるのは本当はひじょーーーに難しいことなのです。
なぜかというと、これらの国では、ほとんどの女性が自分の最後にあった生理のことなんて覚えていないからです。
ん。なんで生理??って思うかもしれません。特に男性の方は。。
日本で女性が、「妊娠したかも?」って思うと、まずすぐに尿検査しますね。
検査が陽性であれば、お近くの産婦人科にいって、エコーであかちゃんがお腹の中にいることを確認します。
すると、産婦人科の先生が、出産予定日を決定します。
このとき、最後にあった生理の日から数えて予定日を決定します。
そして、その予定日から逆算して、在胎週数を決定します。
しかし、多くの途上国の女性は、生理がこないからといってすぐに薬局にいって妊娠検査薬なんて買うことができません。
お腹がかなり出てきて、初めて医療機関にかかります。お腹が目立ってくるのころですから、もうすでに数ヶ月たってしまっています。
何ヶ月も前の生理のことなんて、誰も覚えていませんよね。
病院にいって、医者から、「最後の生理はいつでしたか?」なんて聞かれても誰も正確に覚えていないのです。
すると、お医者さんは、お腹の大きさを測って、「うーーん20cmくらいだから、妊娠20週にしよう」と決めるのです。かなりアバウトですね。
こんな決め方ですから、かなり誤差が生じてしまいます。
ですので、実は、この論文のデータも結構アバウトなものがかなり入っている、と思われます。
とは言え、早産児のデータはほんとに入手が難しいので、これは貴重な報告であると思います。
世界の早産率
さて、本題に戻って。。
この地図は、世界の早産率を色分けしています。紫が濃くなればなるほど、早産率が高くなっています。
一見してわかるように、濃い紫はアジア、アフリカに集中していますね。
アフリカはのきなみ10%以上のところが多いようです。
さらに、週数別に見てみますと、32週から37週までの後期早産児といわれる、あかちゃんたちが85%占めています。
問題なのは、これらのあかちゃんがどれくらい死亡していくのか、ということです。
私が働いている日本の周産期母子医療センターのようなところですと、32週以降で出生したあかちゃんが亡くなることはめったにおこりません。これくらいの早産ですと、あかちゃんもかなり成熟しています。
ですから、たとえNICU(新生児集中治療室)に入院しても、ちょっとサポートしてあげるだけで、ふつーに退院して、ふつーにお家で育っていけます。
「ふつー」ってかなりいい加減な表現ですが、あかちゃんが自分でおっぱい飲めて、発達も満期で出生した児と変わらず、保育園や学校にも普通学級に通える、そんな意味です。
ところが、こんなあかちゃんたちが、濃いむらさき色だった国、つまりアフリカの発展途上国ではかなり死んでいきます。
新生児死亡に占める、早産児の割合については、また回を改めて書きたいと思います。
まとめ
- 全世界で、早産率は10%くらい(2014年)
- 80%は、アジアやアフリカの国
- 80%は、日本ではまず死ぬことのない後期早産児(32週以降の早産あかちゃん)である
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